研究概要 |
これまでに多くの造血因子が同定・単離されたが、いずれも多能性造血幹細胞を増やすものではなく、ある程度分化した幹細胞を増殖させるとともに分化を促進する因子である。Notchは細胞内領域のみに切断されることにより、ligand非依存性の活性化型Notch(aNotch)となるが、このaNotchが造血幹細胞を増幅できる可能性が考えられている。myeloid系の分化モデルとして、マウス骨髄系前駆細胞株である32DのG-CSFによる好中球への分化を、erythroid系の分化モデルとしてマウスフレンド赤白血病細胞株F5-5のDMSO及びactivinによる赤芽球系細胞への分化を用い、aNotch1の分化に対する影響を調べた。その結果、aNotch1により、それらの分化は抑制されることが示された。さらに、分化抑制効果がどの段階で働いているかを調べるため、32DおよびF5-5を用いて、myeloid specificな転写因子としてはC/EBPα,C/EBPε,PU.1,AML1b,c-myb,GATA-2について、erythroid specificな転写因子としてはSCL,GATA-1,GATA-2,NF-E2(p45),MafK(p18),EKLF,c-mybについて分化刺激の前後での発現量を比較した。その結果、分化刺激により活性化型Notch1発現細胞およびコントロール細胞の両者において、これらのlineage specificな転写因子は同様の発現パターンを示した。しかし、GATA-2は活性化型Notch1発現細胞でのみ分化刺激後も発現が維持されており、Notch1による分化抑制効果が、GATA-2を介している可能性が示唆された。
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