[方法]腎生検によって組織型を確認しているネフローゼ症候群18例の新鮮尿を材料とした。細胞成分を除去した尿よりアルブミンを他の蛋白から分離した後、Iwataらの方法により脂肪酸を抽出・蛍光ラベルし、高速液体クロマトグラフィーにて分離・同定した。またより低分子の蛋白画分の脂肪酸組成についても同様に定量した。 [結果と考察]全症例で高脂血症を合併しているにもかかわらず血中脂肪酸量は健常人と差がなかった。しかしやはり全症例に低アルブミン血症が存在していることからアルブミン1分子あたりの脂肪酸結合量は増加していることが示唆された。いっぽう尿中アルブミンの脂肪酸結合量は血中の10分の1以下であった。脂肪酸の組成では、尿中アルブミンは血中に比し飽和脂肪酸の含量が圧倒的に大きく特に多価不飽和脂肪酸はほとんどが測定感度以下であった。以上の事実は、より多くの脂肪酸を結合した(したがってより陰性荷電の多い)アルブミンが糸球体より漏出しにくいか、あるいは漏出には差はないがより尿細管に再吸収されやすいことを示唆している。ネフローゼ症候群の病態より前者の可能性は低く、したがって尿細管に負荷される脂訪酸が同症候群の尿細管・間質障害に影響を与えている可能性がある。脂肪酸組成と臨床像・腎生検像の間には現在までのところ一定の傾向は得られていない。またアルブミンよりも低分子の画分にも脂肪酸が認められた。私信であるが蛋白尿患者の尿中には本来細胞質蛋白である脂肪酸結合蛋白が存在することが知られており今後アルブミンと合わせ検討を加える予定である。
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