本年度も引き続きネフローゼ症候群患者の尿中脂肪酸を分析定量した。症例数を増やしても結果はほぼ前年度と同様であった。すなわち尿中アルブミンに結合する総脂肪酸量は、血液中のそれと比べ10分の1以下と少なく、そのほとんどが飽和脂肪酸であった。また脂肪酸組成と臨床像(腎機能、蛋白尿・高脂血症の程度)や腎病理学的診断との間に一定の傾向は認められなかった。近位尿細管細胞由来の脂肪酸結合蛋白が存在すると思われる低分子蛋白画分においても同様の結果であった。また脂肪酸は蛋白を含まない画分にも存在することも明らかとなった。以上より、血液中においてアルブミンは脂肪酸を結合し担体として機能しているが、尿中に漏出する過程で希釈される結果もはや脂肪酸結合蛋白としては機能しないと考えられる。したがって尿中アルブミン結合脂肪酸の分析によって腎炎進展における役割を検討することは不可能である。今後、近位尿細管細胞へ脂肪酸負荷の影響を調べるため培養細胞を用いた検討、脂肪酸結合蛋白のネフローゼ症候群患者での動態の検討を行なっていく予定である。
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