研究概要 |
発癌に関与していると考えられるミスマッチ修復遺伝子(MMR)の異常は、マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability,MIN)として検出される。大腸癌全体では、約15%にMINが見られるが、残り85%では、染色体の数の異常(aneuploidy)や大きな欠失が認められる(染色体不安定性;chromosome instability,CIN)。aneuploidyは、有糸分裂の際に娘染色体が等分に分離しないためであり、欠失は、分裂時の染色体組み換え(mitotic recombination)によるとされる。本研究では、染色体数の異常が起こるメカニズムの解明を最終目標とする。その第一歩として、最近単離された細胞分裂のmitotic checkpointに関与する遺伝子(MAD2,mitotic arrest defective 2)に注目し、今年度はMAD2遺伝子解析の為の方法を確立した。即ち、正常細胞と株化癌細胞から抽出したメッセンジャーRNAをcDNAへ逆転写し、MAD2遺伝子の塩基配列に特異的なプライマーを用いて遺伝子を増幅するreverse transcriptase-polymerase chain reaction(RT-PCR)である。株化癌細胞であるHeLa細胞では、1塩基変異が認められたが、サイレント突然変異でアミノ酸を変化させる変異では無かった。また、MAD2cDNAをプローブにして行ったゲノムライブラリー・スクリーニングでは偽遺伝子の存在が判明した。今年度確立したRT-PCR法を用いて、他の株化癌細胞や原発腫瘍組織でのMAD2遺伝子の解析を施行するよう計画している。
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