(1)標的遺伝子の選択:癌腫で起こっている遺伝子異常を検出するために、消化器癌手術切除標本ならびに健常組織から拍出したtotalRNAより変換したcDNAを用いてdifferentialdisplay法にて癌組織での発現が著しく増強あるいは低下している遺伝子を検索した。具体的な標的遺伝子として、肝臓癌でmRNAの発現が欠損していたhIRH/SDF-1遺伝子の解析を選訳した。 (2)臨床消化器癌での発現量の解析:肝臓癌、食道癌、胃癌、大腸癌の各30症例を対象にRT-PCR法にてRNA発現量を定量的に解析したところ、どの癌腫においても健常部粘膜での発現量と比較して約40%程に低下していたが、癌の臨床病理学的因子との関わりはなく、当該遺伝子の発現低下は癌の生物学的悪性度を筬定するものではなかった。 (3)ヒト細胞における増殖抑制効果の検討:多くのヒト癌細胞はレセプターCXCR4を発現しているが、リガンドであるhIRH/SDF-laを発現していないことがわかっているため細胞培養液中に外来性に加えられたhIRHproteinにより細胞増殖抑制が認められるかどうかを現在検討中である。 (4)今後の展望:hIRH/SDF-la遺伝子は癌細胞増殖抑制機能を持つ可能性が予想されるため、hIRH/SDF-la遺伝子を各種ヒト癌細胞内に導入し、増殖に対する遺伝子導入効果(増殖抑制効果)の有無を評価する。
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