末期心不全に対する外科的治療として近年開発され、脚光を浴びている左室部分切除術の効果を独自に開発した心不全犬並びに正常心機能犬の摘出心を用い、実験的に左室部分切除術前後で評価し、心力学的及び心エネルギー学的に初めて検討を加えた。結果は左室部分切除術にて不全心に対しては有意な収縮性(Emax)改善があり、一定の機械的心仕事に対する心筋酸素消費(Vo_2)の減少を認めた。また障害が懸念された心拡張機能のうち心弛緩能は術前後で不変であり、心弛緩に対する悪影響は認められなかった。これに対し正常心に対する左室部分切除術では収縮性改善が認めらず、有為性を認めなかった。左室部分切除術の心機能改善の可能性と手術適応判定の重要性とが示唆された。このような実際の臨床像に似たモデル犬での検討、他の装飾因子を排除し単純化した実験モデルでの評価により、臨床的に解明困難な左室部分切除術の作用機序の究明において一躍を担えたものと考える。 以上の結果を第51回胸部外科学会、第2回日本心不全学会、Cardiac Volume Rcduction研究会等で報告してきた。今後第99回日本外科学会、第63回日本循環器学会等にて引き続き研究成果の発表を予定している。また、臨床の場への研究成果還元を行って行きたいと考えている。
|