研究概要 |
大動脈弁輪拡大に伴う大動脈弁閉鎖不全症に対して自己大動脈弁温存術式が提唱されている.その一つである,Yacoubらの報告したリモデリング法の問題点と考えられる遠隔期の弁輪拡大を予防するという目的で,この術式に併用して大動脈弁をリングを用いて形成することで安定した術式が得られると考えた. 1.大動脈弁機能に関する基礎的研究 リング開発のための基礎データとして昨年度に 正常弁・弁輪の形態を検討した.今年度は弁機能(動態)の検討を行った.動態;正常ブタ(n=3)を用いて,遠心ポンプと膜型肺により摘出灌流心モデルを作成し,working modeとしてx線撮影により弁動態を観察した.弁交連部は収縮期に平均約10%の拡張を示したのに対して,弁基部(いわゆる弁輪部)は収縮期に平均15%収縮し,拡張期に拡張していることが判明した. 2.大動脈弁輪拡大モデル作成と試作リングの効果判定 昨年度施行した方法は臨床例とは異なる形態を生ずるため断念した.そこで大動脈弁輪を温存したまま大動脈弁交連部を切開しパッチ拡大を行い大動脈弁逆流を引き起こすかどうかを検討する目的で,正常ブタ(n=3)を用いて心筋保護液投与心停止下にパッチ拡大(昨年度測定した正常弁形態を基に拡大部が弁輪の150%となるようにした)を行い上記と同様の摘出灌流心モデルを作成した.内視鏡を用いて弁尖の適合性を観察すると中心部に適合不良が見られたが,逆流の定量化には至らなかった.この方法で臨床でみられる大動脈弁輪拡大に伴う大動脈弁閉鎖不全症と同様の病態が作成できる可能性が示唆されたため,今後慢性モデルを作成し,引き続き達成しえなかったリングの効果判定の検討を行う予定である.
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