研究概要 |
近年、神経外傷の研究においても、分子生物学的手法による検討がなされている。しかし、聴神経鞘腫摘出術などにおいて経験されるような外傷性蝸牛神経損傷の分子生物学的病態解析と蝸牛神経変性防止策の検討は行われてこなかった。これは、外傷性蝸牛神経損傷を定量的に評価しうるモデルの確立されていなかったことに大きな原因があった。我々は、本研究費補助期間中に、定量的評価可能な外傷性蝸牛神経損傷モデルを完成させた(本様式項目11参照)。このモデルを用いて、外傷性蝸牛神経変性過程には、一次的損傷によるnecrosisに加えてapoptosisによる蝸牛神経変性が起こっている可能性があることが明らかになった。Apoptosisが惹起される原因には種々のものがあるが、neurotrophinsの欠乏はその一因となりうる。そこで上記のモデルを用いて、損傷蝸牛神経に対する種々のneurotrophins(NGF,BDNF,NT-3)の局所投与の効果についても検討した。その結果、これらのneurotrophinsの単独投与のみでは、蝸牛神経変性を防止できないことなどが判明した(本様式項目11参照)。現在、apoptosisに関与するcaspase inhibitorの蝸牛神経変性防止効果についても検討を進めている。
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