研究概要 |
神経細胞に高濃度のglutamate負荷を行うと神経細胞死が起こることが知られている。今回培養神経細胞に致死的な濃度のglutamateを加え,さらにそこにmicroglia培養上清を加え神経細胞の様子を時間経過を追って観察したところ比較的早期の時間から神経細胞死が抑制されることがわかった。さらに培養microgliaに神経細胞に負荷したのと同濃度のglutamateを加え,その培養上清をglutamate負荷後の培養神経細胞に加えるとさらに強い神経細胞保護作用が認められた。 以上よりmicroglia培養上清にはglutamateによる神経細胞死に対する保護作用をもつ物質が存在するということが予想され,またその作用はmicroglia自身へのglutamate刺激により増強されると考えられた。そこで我々はmicroglia培養上清内のcytokine(TNF-αおよびIL-6)の濃度を時間経過とともに測定した。それによるとmicrogliaへのglutamate刺激により非常に早期からこれらcytokineの濃度が上昇するのが認められた。 高濃度glutamateによる神経細胞死に対しmicrogliaの培養上清が保護的に作用し,またmicrogliaへの同濃度のglutamate刺激によりその作用が増強されたこと,また培養上清中のcytokine濃度がglutamate刺激により上昇したことから,生体内で脳虚血時などに高濃度のglutamateにさらされた神経細胞に対して,glutamateにより刺激をうけたmicrogliaがcytokineを介して非常に早期から保護的にはたらいている可能性が示唆された。
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