研究課題/領域番号 |
10877217
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
生塩 之敬 熊本大学, 医学部, 教授 (20028583)
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研究分担者 |
西 徹 熊本大学, 医学部・附属病院, 助手 (00264309)
竹島 秀雄 熊本大学, 医学部, 助手 (70244134)
河内 正人 熊本大学, 医学部, 助教授 (70178218)
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キーワード | chemokine / fractalkine / cloning / neurocytoma / ganglioglioma / medulloblastoma |
研究概要 |
相同分子の多いケモカインファミリーの中で、最近単離されたCX3Cの特異的な構造および膜貫通ドメインを有するフラクタルカインについて以下の研究を行った。 1)まず、フラクタルカインの相同分子が存在するのかという重要な問題に解答を出すため、ヒトグリオーマ細胞株よりcDNAライブラリーを作成し、フラクタルカインのcDNAプローブとして、マイルドな条件でスクリーニングを行ったところ、2種類の陽性cDNAクローンが単離された。しかし、塩基配列解析を行った結果、3.非翻訳領域の長さが違うのみで蛋白質コード領域は完全に一致した。従って、これら2種類のクローンは生物学的機能にはなんら違いがないものと推定された。次に手法を替えESTデータベースを用いてコンピューター上で相同性のある分子をスクリーニングしたが、既知のCCケモカインファミリーのメンバーがリストアップされたのみで、膜貫通領域を持つ新たなケモカイン分子は同定できなかった。以上より、フラクタルカインには、相同分子は存在せず、1分子で1サブファミリーを形成する特異的ケモカインであるという結論に達した。 2)つぎに、フラクタルカイン分子は、ヒトおよびラットにおいて神経細胞に特異的に発現していることが最近報告されたので、神経由来の脳腫瘍におけるフラクタルカイン発現の意義について免疫組織化学的に検討した。Neurocytomaでは、8例中7例で発現が見られ、その発現は神経特異的エノラーゼとほぼ一致していた。Gangliogliomaでは、約半数(9例中5例)で発現が見られ、ganglion細胞で強陽性であった。一方、medulloblastomaでは11例中3例でのみ発現が見られたのみであった。神経分化への傾向に一致して発現の頻度は高くなったが、発現パターンはこれまでの神経細胞のマーカーとは必ずしも一致しておらず、臨床的な神経細胞の分化度を示すマーカーとしての利用が可能か、今後の検討が必要である。
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