研究概要 |
平成10年度の研究成果 目的:各種のヒト下垂体腺腫におげるGHRH-RとPit-1mRNAの発現の量的な関係をcompetitive RT-PCR法にて評価する。 対象:手術時に摘出されたヒト下垂体腺腫組織の凍結標本(計58例)。機能性腺腫はGH産生腺腫10,PRL8,TSH1,ACTH2例。非機能性腺腫のうち、臨床的にホルモン症状を認めず、ホルモン検査も大部分が正常域であり、ホルモンの転写産物または翻訳産物を検出することができ、特定のホルモンの産生を強く示唆する電顕所見が見られるものを不顕性腺腫と定義し、細分類した。不顕性腺腫では不顕性GH産生腺腫4例,PRL2例,TSH7例,ACTH3例。不顕性腺腫を除外した非機能性腺腫は21例。 方法:primer及びcompetitorの作製:GHRH-R,Pit1,β2Mのprimerおよび、それらのprimerと相補的な塩基配列を両端にもつDNAcompetitorを作成した(TAKARA competitor作製kitを使用)。competitive RT-PCR:lsogen(和光純光)を用いて凍結組織よりtotal RNAを抽出し、逆転写酵素(RAV-2)を作用させ各組織のcDNAライブラリーを作成した。GHRH-R,Pit-1を対象としてDNA competitorと競合的にPCRを施行し定量。house keeping geneであるβ2Mもcompetitive PCRを施行し、これを内部基準量として補正した。 結果・考案:GH産生腺腫では、Pit-1とGHRH-Rの量は比例する傾向、PRL産生腺腫では反比例の傾向が見られた。Pit-1が関与するとされるGH,PRL,TSHの不顕性腺腫では、多くの症例で対応する機能性腺腫と同様のPit-1とGHRH-R遺伝子の発現を認め、不顕性に至る原因とは関連していないと考えられた。
|