研究概要 |
平成10年度は各種のヒト下垂体腺腫におけるGHRH-RとPit-1mRNAの発現の量的な関係をcompetitive RT-PCR法にて評価することができた。平成11年度はin situ hybridizationによりその発現を形態として観察し、定量結果と比較することを目的とした。前処理、ハイブリダイゼーション、洗浄や検出法について様々な条件設定下で最適化を進める実験を行ったが信頼しうる結果は得られなかった。平成12年度は、プローブの再作成や、凍結検体を用いた実験を施行したが、信頼しうる結果は得られなかった。 実験の最終段階として、免疫染色や電顕所見と、両mRNAの定量結果を比較検討した。 過去の不顕性腺腫の報告の多くでは、電顕上ではsparsely granulatedtype adenoma、あるいは機能性腺腫と類似した形態を示すとされている。しかし、症例によっては、免疫染色上では特定のホルモンを産生している所見が得られるにも関わらず、電顕上、特徴的構造を欠き、より未分化で、形態からは特定のホルモン産生をしていると判断することが難しいものも存在した。今回の実験結果では、このような電顕上の特徴的な構造を欠く症例においても、GH,PRLの不顕性腺腫においては、Pit-1とGHRH-RmRNAの発現は、それぞれの機能性のものと同程度であり、不顕性TSH腺腫では、両mRNAの発現は機能性あるいは不顕性GH腺腫と同様にかなりの量が発現していることが示された。これに対し不顕性を除いた非機能性腺腫では両方のmRNAが十分に発現していることはなかった。よってGHRH-R,Pit-1mRNAの発現量の測定は、Pit-1関連の不顕性腺腫においては、電顕上で不顕性腺腫と判定することを躊躇するような症例でさえも、不顕性腺腫であることを強力に支持することができる有効な手段と考えられた。
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