研究概要 |
アルギン酸を基材とし生体内での癒着防止効果を与えるためにスルホン酸基を種々の割合いで導入することを試みた。スルホン酸基の導入効率、試料の扱いやすさ、ガンマ線による滅菌などを検討し、スルホン酸基置換率10%アルギン酸を作成して以下の動物実験に臨んだ。 【実験方法】 ケタラール麻酔下成熟家免(体重3kg)の足関節直上で総趾屈筋腱鞘を露出、横切して足趾最大底屈位で引き出した総趾屈筋腱の内側1/2を切離し腱鞘内に戻す操作を行なって腱損傷後の治癒過程のモデルとし、先の試料1gを腱鞘内に注入した群(アルギン酸群)とそのまま閉創した群(コントロール群)を作成した。外固定はせず術後2,4,8週で屠殺(各6羽、計36羽)し、両側膝関節離断して安静位から総趾屈筋腱を400gで牽引した際の足趾屈曲角度を測定し術側の非術側に対する屈曲角度の比を求め、さらに腱損傷部の治癒の状況を肉眼的および組織学的に検討した。 【結果】 (1)屈曲角度(対非術側比)。2週:アルギン酸群0.79±0.18、コントロール群0.65±0.24。4週:アルギン酸群0.96±0,10、コントロール群0.69±0.11(p<0.05)。8週:アルギン酸群0.91±0.13、コントロール群0.75±0.16。(2)損傷部所見。2週:損傷部は修復途上にあり、両群に有意差はなかった。4週:肉眼的に腱損傷部は修復していたが、組織学的には両群とも線維芽細胞と膠原線維が増生していた。アルギン酸群でそれらは縦方向への再配列の傾向を強く認め、腱に近い構造を呈した。8週:修復が進み、膠原線維の縦方向への再配列がコントロール群でも見られた。アルギン酸は2および4週では創部にクリーム状残留物としで残っていたが8週では全例消失し、組織学的に異物反応を呈している例はなかった。 【展望】 本素材は腱損傷後の癒着防止材として有望であり、今後も検討を続けたい。
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