研究課題/領域番号 |
10877225
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
島田 幸造 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (00216061)
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研究分担者 |
菅野 伸彦 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70273620)
菅本 一臣 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (40294061)
大園 健二 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (90168930)
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キーワード | adhesion (癒着) / flexor tendon (屈筋腱) / biomaterial (生体材料) / sulfonic alginate (スルホン酸化アルギン酸) |
研究概要 |
材料調整の段階でアルギン酸のカルボキシル基にエチレンジアミン架橋を作り、さらにカルボキシル基の10%をスルホン酸基に置換した材料がゲル状でハンドリングがよく癒着防止効果が期待できたため、本実験にはこれを素材とした。 【本実験】成熟家兔の総趾屈筋腱腱鞘を露出し、腱鞘内で総趾屈筋腱の内側1/2を切離する操作を行って腱損傷後の治癒過程のモデルとした。洗浄後スルホン酸基置巻率10%アルギン酸を腱鞘内に注入した群(アルギン酸群)とそのまま閉創した群(コントロール群)を作成した。術後2、4、8週で屠殺し、一定負荷で総趾屈筋腱を牽引した際の足趾屈曲角度を測定し、術側足趾の非術側足趾に対する屈曲角度の比の値、すなわち「腱の滑りやすさ」を求めた。計測後、腱損傷部の治癒と周囲との癒着を観察し、組織切片を作製してHE染色およびコラーゲン(van Cieson)染色を行って組織学的に検討した。 【結果】屈曲角度(対非術側比)は術後2週で有意差なく4週でアルギン酸群が有意に良好、8週ではアルギン酸群が良好な値であったがコントロール群も改善して有意差はなくなった。創部の治癒状況は2週では腱は修復過程にあり両群に明らかな差はなかった。4週では腱修復はほぼ完了し、アルギン酸群で膠原線維の縦方向への良好な配列が見られた。8週では両群間の差は少なかった。アルギン酸は2および4週では創部に残存し、8週では消失していた。 【結論】スルホン酸化アルギン酸は、腱損傷後4週前後の最も臨床的に重要と思われる時期に有意差をもって屈筋腱の滑走を良好に保っており、かつ腱の修復を妨げず、さらにその後の過程で自然消滅していた。従って本材は腱修復時における癒着防止材として有用な生体材料と思われた。
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