軟骨組織は無血管性の特殊に分化した組織である。本研究では、本来血管のない関節軟骨組織において、強力な血管新生因子である内皮細胞増殖因子(VEGF)の発現を検討するとともに、VEGFに結合することでその生理活性を阻害する分子のクローニングを目指す。 また、VEGFと未知の結合分子との複合体をマトリックスメタロプ口テアーゼ(MMP)で分解することでVEGF活性の変化を調べる。本年度得られた成果は以下の通りである。 (1) 正常、慢性関節リウマチ(RA)および変形性関節症(OA)関節軟骨から得られた軟骨細胞におけるVEGF遺伝子発現をRT-PCRにより検討したところ、いずれのサンプルにおいてもVEGFの発現が認められた。VEGF_<121>の発現をin situ hybridizationで検討したところ、軟骨破壊が進行した部位のRA関節軟骨細胞が標識され、免疫組織化学的にもRAとOAにおいて同様な局在を認めた。 (2) VEGFに結合する分子をクローニングするために、VEGFをbaitとしてGAL4 based yeast two hybrid systemにより軟骨細胞cDNAライブラリーをスクリーニングした。陽性を示した162クローンのうち128クローンを部分シークエンスしたところ、既知の分子としてフィブロネクチン、コラーゲン、テネシンなどの細胞外マトリックス分子の他、膜タンパクや種々のサイトカインなどが含まれていた。今後、全てのクローンをシークエンスするとともに、重要な分子について全長シークエンスの決定、VEGFとの結合性の検討および活性の変化を調べる予定である。
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