研究概要 |
呼吸不全患者で酸素化能低下の原因の一つとして、下側肺障害の概念がある。下側肺障害の診断にはCT診断が必要であるが、酸素化能の極度の低下時には実施不可能である。今回、重症患者にも適応できる経食道エコーを用いて、下側肺障害の診断を検討した。 対象および方法:CTと経食道エコーで同時に評価し得た呼吸不全患者40名を対象とした。両方法で下側肺障害部位の有無、面積、輝度および酸素化能を評価した。また10名にPEEPを15cmH_2Oまで負荷し下側肺障害部の変化を観察した。 結果:40名中CTと経食道心エコーともに下側肺障害を認めたものは26名であった。下側肺障害の有無は酸素化能の指標値に影響しなかった(P/F:下側肺障害有 179±64,下側肺障害無 192±80)。経食道心エコーで診断した下側肺障害面積は12.0±6.1cm^2であり、左CT面積と強い相関をしめした(p<0.01)。また右CT面積とも強い相関を見た(p<0.01)。酸素化能と経食道心エコーで判断した下側肺障害とも強い相関を認めた(p<0.05)。PEEP負荷時には下側肺障害部位面積が減少し、また酸素化能も改善した。 考察:下側肺障害部位の治療としてはPEEP、腹臥位などがある。下側肺障害の成因としては重力の影響が示唆されているが、未だ不明である。経食道エコーは重症患者の循環管理目的に使用されるが、下行大動脈を介すると、左肺障害部位の観察が繰り返し可能である。経食道エコーを用いた下側肺障害の観察は重症患者の呼吸管理に有用と思われた。
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