研究概要 |
我々はラット前立腺と精嚢のエストロジェン反応特性の違いを実験モデルを用いて形態学的観察で明らかにした。近年ERβが新たに発見され雄性副性器でのエストロジェン作用機序解明に新局面を迎えた。そこで我々は当該年度内に実験モデルおよびヒト前立腺病理組織を用いて検討を行った。 1) ラット前立腺、精嚢におけるERα、ERβmRNA発現の比較検討:定量的PCR(real time PCR)法で発現量を測定した。(1)前立腺ではERβmRNAの発現率がERαより顕著に高く、精嚢では逆にERaがERβより高かった。(2)精嚢ではERαmRNA発現は去勢およびエストロジェン投与により非常に強く誘導されその比率は無処置と比較しそれぞれ3.9倍、7.6倍だった。一方ERβmRNAはエストロジェンによりほぼ消失した。前立腺ではERβmRNAの発現は去勢およびエストロジェン投与により誘導され無処置と比較し各々1.9倍、10.3倍だった。一方ERαmRNAはエストロジェンで消失した。(3)ARmRNAの発現は前立腺、精嚢とも去勢で誘導されるがエストロジェン投与により両臓器とも顕著に抑制された(J Uol,1999)。 2) ヒト前立腺におけるERβのアンドロジェン誘導について検討:ヒト前立腺のERβは免疫組織学的検討で上皮に局在していた。一方ERαは主に間質に認めた。In vitro実験で上皮細胞のERβmRNAはDHT無しと比較し10^<-7>モルDHTで7倍に増加した。In vivo実験では未治療前立腺癌組織群のERβmRNAがアンドロジェン除去治療群より高かった(J Urol,1999)。 3) ラット前立腺、精嚢におけるERα、ERβタンパクの局在とin-situ hybridization法によるmRNA発現の局在を比較検討すべくさらに実験を進めている。
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