モルモット蝸牛より、顕微鏡下に主に外有毛細胞と周辺の支持細胞からなる細胞塊を採取した。PCRを行わず菫接二重鎖cDNAを作製した。これを平滑末端にてプラスミドベクターpKF3に連結し、大腸菌に形質導入しコロニーを採取した。1567個のコロニーを解析したところ、1028個にcDNAの挿入が確認された。挿入断片の長さは様々であったが、おおよそ200bp以上のクローンを解析することとした。結果として175個の塩基配列を解読した。ベクター由来の配列は7個、rRNA由来の配列は18個であり、そのほかの150個がモルモットcDNA由来の配列と考えられた。ホモロジー解析の結果、ベータグロビン遺伝子と思われるクローンが最も多く検出された。150個のうち58個はオープンリーディングフレームを持ち、蛋白質コード領域の可能性があった。これらの中でモチーフ解析を行い、膜蛋白の可能性を有するクローンは8個であった。クローンの多くは非翻訳配列であると予想されるため、オープンリーディングフレームを持たないクローンも解析していく必要があると考えられた。この点についてはRT-PCR法にて解析中である。現在の段階では外有毛細胞モーター蛋白質cDNAを同定することはできなかったが、それに繋がる有益な情報を多く得ることができた。このような蝸牛のショットガンクローニングは海外で行われているがmRNAが少量のためcDNAをPCRで増幅している。そのため、蝸牛での発現量を正確に反映しているとはいえない。今回の研究ではPCRを用いていないためより正確なmRNAの発現状況に関するデータを集めることができた。
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