研究概要 |
耳下腺多形腺腫の発生におけるHMGI-C遺伝子の関与とその活性化機能を明らかにする目的で検討を行い、以下の成績を得た。 1. ヒトHMGI-C特異的抗体を用いた免疫染色ならびにwestern blot法による解析から、耳下腺多形腺腫15/18例(83%)と、高頻度のHMGI-C蛋白の発現亢進が観察された。 2. HMGI-C陽性耳下腺混合腫瘍症例(PA1)を用い、HMGI-C遺伝子の構造解析を行った。 (1) Nested PCR法でもPAlには正常HMGI-C遺伝子の発現は検出されなかった。 (2) 3'RACE法HMGI-C遺伝子の構造解析により、正常HMGI-C遺伝子はexonl〜5で構成されているのに対して、PAlではHMGI-C遺伝子のexonl,2,3の3'側に約500baseからなる新たな遺伝子の一部が融合してキメラ遺伝子を形成している事が明らかとなった。 (3) 分断点を鋏むように設定したprimeirsを用いたRT-PCR法によりPAlにおけるキメラ遺伝子の発現を確認した。 (4) キメラ遺伝子パートナーは、Gene Bankにおけるホロモジー検索で、子宮筋腫でHMGI-C遺伝子の転座パートナーとして報告があるが、未だクローニングされておらず、正常組織における発現やその機能は不明である。約500baseをプローブとして複数のヒト成人組織における発現をNorthern blot法で解析したが、いずれの組織でも発現は観察されなかった。現在、ヒト胎児組織における遺伝子発現をin situ hybridization法で解析中である。 (5) 今回明らかになったキメラ遺伝子の耳下腺多形腺腫症例における出現をRT-PCR法で現在解析中である。 (6) 耳下腺多形腺腫症例の染色体解析も現在行っている。
|