癌関連網膜症の患者血清が認識する網膜特異抗原としてTUB遺伝子ファミリーの一つであるTULP1遺伝子を発現スクリーニングによりヒト網膜由来のcDNAライブラリーから単離した。TULP1のアミノ酸配列はTUB遺伝子とC-末端の256アミノ酸残基において74%の相同性を有していた。しかし、N-末端側は全く相同性はみられなかった。cDNAを大腸菌発現ベクターに組み込み、TULP1の種々の大きさの組み換えタンパクを作成し、Western blot法により患者血清の認識部位を検索したところ、患者血清はN-末端の18アミノ酸配列と強く反応した。そこで、TULP1に特異的な抗体を作製するために、この18アミノ酸配列を持つペプチドを抗原としてウサギに免疫し、得られた抗血清をペプチドカラムを用いてアフィニティ精製した。この抗体を用いてWestern blot分析を行ったところ、網膜のタンパク抽出物でのみ78kDaの単一バンドが検出された。また、本抗体を用いた網膜の免疫組織染色によって、TULP1タンパクは視細胞の内節から外網状層のシナプスリボンにまで広く分布していた。しかし、視細胞外節では強いシグナル検出されなかった。次に、TULP1のcDNAをプローブとしてFISH法による染色体マッピングを行った。TULP1遺伝子はヒト染色体第6番短椀21.3に存在することが明らかとなった。同じ染色体位置には常染色体劣性の網膜色素変性症(RP14)がマップされていた。つい最近、米国の二グループからRP14の患者家系においてTULP1遺伝子の変異が存在することが報告され、TULP1遺伝子が網膜変性症の原因遺伝子である可能性が示唆された。
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