胎生期の形態形成においてみられる生理的な細胞死はプログラム細胞死と呼ばれ、アポトーシスの典型例とされている。本研究では胎生13、14日のマウス肢芽を用いて指間部で生じる細胞死の過程とそれらを処理する細胞を、DNAの断片化を検出するTUNEL法とマウスの単球-マクロファージ系細胞に対するモノクロナール抗体(F4/80、MOMA-2、MAC-2)を用いて免疫組織化学ならびに電子顕微鏡により形態学的に解析した。 胎生13日の肢芽指間部では核濃縮を呈する死細胞が散在的にしか認められなかったのに対して、胎生14日になると核濃縮を呈する細胞が多数出現し、その多くは数個の集団を形成していた。TUNEL染色ではこの核濃縮を示す細胞に一致してTUNEL陽性像が認められた。胎生14日にみられる集団を形成するTUNEL陽性細胞はマクロファージに貪食されたものが主体であり、これらのマクロファージは免疫組織化学的にF4/80、MOMA-2両陽性またはMAC-2のみ陽性のどちらかを示すものがほとんどであった。一方、胎生13日および14日で集団を形成していないTUNEL陽性細胞は間葉細胞によって貪食されており、この間葉細胞もMOMA-2のみ陽性を呈した。 以上の結果から、マウス肢芽指間部においてTUNEL陽性細胞を貪食する細胞にはまずマクロファージと間葉細胞の2系統があることが明らかになった。また死細胞を処理するマクロファージにはF4/80陽性またはMAC-2陽性の2タイプがあることが確認された。さらにマクロファージの出現はTUNEL陽性細胞の増加と一致することから、マクロファージは肢芽指間部での細胞死の発生機序にも関与している可能性が示唆された。
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