研究概要 |
ラットを用いた自家移植実験の問題点<目的>私たちは、ヒトの真皮成分を用いて、微小代用血管を作成するという試みを行っている。最終的には、ヒトの真皮成分から微小代用血管を作成し、保存し、必要なときに使う(同種移植)のが目的である。今回は、拒絶などの免疫系の要因を除き、真皮成分から血管を作ることに焦点を絞るため、次の実験を行った。 <方法>ラットの真皮成分を作成して血管を作り、同じラットに移植するという自家移植のモデルを作成し、その際の問題点について調べた。ラットはウィスター系の雄で300g以上のものを使用した。 <結果>1,ラットの真皮成分を作成する際に、採取した皮膚から表皮を剥がすのに、冷凍と解凍という一連の操作が最低5回は必要であった(人の場合は3回)。 2,これは、ラットの皮膚に生えた無数の毛が原因であった。 3,こうして得られたラットの真皮成分には、H.E.染色による組織標本で、細胞成分が除去され全く見られないことがわかった。 4,また、TypeIVコラーゲンを目的に免疫染色した結果、作成したラットの真皮成分の表面には、基底膜が残っていることがわかった。 5,ラットの真皮成分をロール状にして側面を縫合する際には、血管吻合用の非貫通性クリップを用いると、内腔に血栓を作らずに、しかも早く、簡単に縫合できた。 6,真皮成分から作った微小血管をラットの股動脈に移植し、血流を再開する際に、表面の毛穴から血液が漏出するという問題が生じた。 7,血液の漏出の問題は、血管クリップをはずす前に、この代用血管の外表面から血液をコーティングすることにより解決した。 8,代用血管を移植した4週後の組織(H.E.染色)では、代用血管の血管壁に豊富な毛細血管が入っている所見が見られた。 <考察>細胞成分が完全に除去されているため、今後同種移植における問題もクリアできると予想される。
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