破骨細胞の骨吸収活性は膜電位などの電気的な調節も受けている可能性がある、との仮説に立ってこの研究を立案した。事実、Cl^-チャネルとの関係についての研究報告は散見されるようになってきた。また、最近、造血幹細胞の分化方向とK^+チャネルの発現については特異性があるとの報告もあった。 まず、Yonedaらの報告(Endocrinology 129:683-689;1991)に基づいて、未分化造血幹細胞モデルであるヒト急性白血病由来細胞株HL-60を用いて破骨細胞形成系の確立を試みた。 我々の培養系においては、いくつか多核細胞の形成は確認されたが、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)に対しては染色されず、破骨細胞様とは確認されなかった。現在、いくつかの異なる細胞株を用いて、効率よく破骨細胞を形成できるよう引き続き検討中である。 ATP感受性K^+(K_<ATP>)チャネルの発現に関しては、Upstate社のポリクローナル抗体を用いて、Westernblot法により生化学的な証明を試みた。HL-60細胞抽出サンプルでの結果は、不特異バンドが多数見られて、まだ満足する結果を得られていない。ただし、比較対照として用いた舌扁平上皮癌由来細胞株SCC25においては、47kDaのところに単一バンドが確認された。これは、Upstate社で提供している情報と一致しており、K_<ATP>チャネルの発現が確認された。 また、ATP感受性K^+(K_<ATP>)チャネルの発現に関する電気生理学的な証明として、現在、K_<ATP>チャネル開口薬であるpinacidilの投与による細胞膜電位の変化をモニターしているところである。
|