筋の物理的性質を、特に粘性と弾性を別けて、評価する試みとして、小林は、衝撃試験法により腓腹筋の粘弾性を計測(小林 一敏:衝撃試験法による緩衝材および筋の非線形粘弾性特性の測定法、筑波大学体育科学系紀要、11巻205-211、1988)し、滝島らは、機械的振動入力により心筋の粘弾性を測定し(滝島 任、小岩 嘉朗:機械的振動による心不全の診断と治療、文光堂、1991)、谷田部は、上顎顎提粘膜にせん断歪みを与えた際のクリープを計測した(谷田部 優:上顎顎粘膜の動的粘弾性測定に関する研究、口病誌、58巻、74-94、1991)。 咀嚼筋(主に咬筋、側頭筋)の粘弾性計測方法に具備すべき用件としては、チェアーサイドでの計測を可能にするために小型軽量化すること、計測は短時間で行なえること、対象となる筋を直接計測することはできないため、筋の周囲組織(皮膚、皮下組織)の影響をできるだけ無視できるようにすること、交付された研究費の範囲内で装置を作製すること等があげられた。 先の研究者達とも連絡を取り合い、情報交換した結果、対象筋に荷重を加えた際のクリープと除重した際の応力緩和の挙動を計測する方法によって、粘弾性を評価していくことが決定ざれた(10年7月末)。 多摩テクニカル(株)と測定装置の設計に関する意見交換を行い、ロードセルと作動トランスから成る装置の設計図が完成した(10年9月末)。 装置の作成に2ヶ月半程かかり年末に電源、増幅ユニットとともに装置が完成した。 平成11年年頭より、NECメディカルシステムの協力をあおいで、出力波形の分析のためのプログラムの作成に取り組み、現在(11年2月28日現在)プログラムの安定性を調査中で、3月末には、咀嚼筋粘弾性の計測を開始できる予定である。
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