研究概要 |
口腔領域に生じた悪性腫瘍の摘出手術によって顎欠損を生じた患者には著しい構音障害が生じる場合が多く,顎義歯による補綴処置が施される場合が多い.しかし,顎義歯の装着により発音機能の回復が図られても,患者の発音機能に対する不満が解消しない場合がしばしばみられる.発音機能に対する客観的な評価としては,一般に発語明瞭度試験が用いられているが,発語明瞭度試験で上記の患者の不満を十分に評価することは現状では困難な場合が多い.顎欠損による構音障害患者の発音機能に対する不満を客観的に評価する新たな方法があれば顎義歯を評価する上で極めて有用であると思われる.本研究は,発語時における精神的ストレスを指標とした顎欠損患者の構音障害に対する不満の新しい評価方法を考案し,語音明瞭度試験と比較することによって,その方法の客観的評価を行うことを目的とした. 本学歯学部附属病院第二補綴科において顎義歯の装着を行った上顎骨部分欠損患者5名および舌切除患者5名を対象として,顎義歯装着状態および非装着状態における患者の発音機能に対する満足度をvisual analogue scale法(以下,VAS法とする)を用いて調査した.さらに各患者に語音明瞭度試験を申請の録音装置を用いて顎義歯装着状態および非装着状態で行い,これと同時にGSR計測装置を用いて患者の発語時における皮膚電気抵抗の変化を測定し,その変化量を発語時における精神的ストレスの指標として測定した. データの採取を完了し,現在,得られたデータから,語音明瞭度試験,皮膚電気抵抗値の変化およびVAS法の結果の関連について検討を行っている.
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