研究概要 |
正常型ヒトP53およびp21を発現する組み換えアデノウイルスを作製した。これらを各種癌細胞株に感染させアポトーシス誘導と細胞周期停止の有無、およびアポトーシスに関わる細胞側因子を解析し、以下の結果を得た。 正常型p53による増殖抑制の有無をG418 colony assayにより検討した。変異型p53を発現する癌細胞株では、正常型p53の導入により著明な増殖抑制効果が認められた。 正常型p53を発現する組み換えアデノウイルスを口腔癌(1種類)、乳癌(3種類)、肺癌(1種類)由来の各細胞株にそれぞれ感染させ、48時間後にDNA断片化の有無をアガロースゲル電気泳動およびフローサイトメトリーにて検討した。その結果、乳癌細胞株のBT549とZR-75-1、肺癌細胞株のRERF-LC-OKにDNA断片化およびsub Gl分画が認められた。 p53によってアポトーシスを起こした癌細胞株(BT549,NR-75-1,RERF-LC-OK)においてはいずれもBaxが発現していた。 p53によってアポトーシスを起こした癌細胞株(BT549,ZR-75-1,RERF-LC-OK)においてもp53発現によりp21が誘導された。すなわちP21の発現は、p53によるアポトーシス誘導を阻害しないことが認められた. p53およびp21発現アデノウイルスを同時に感染させた場合、およびp21アデノウイルスを感染させ48時間後にp53発現アデノウイルスを感染させた場合でも、p53発現アデノウイルスによってアポトーシスが誘導された。すなわち、P21による細胞周期停止よりもp53によるアポトーシスの方が優位に働くことが示唆された。
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