研究概要 |
(1) 対象と方法 これまでにわれわれは歯性病巣感染が疑われた皮膚科患者131例に対して,詳細な口腔内の理学診査(歯周組織検査)とX線診査(パノラマX線検査)を施行し.そのうち口腔内の慢性病巣感染巣を有する患者80例について,膿汁採取,細菌検査を行い各種溶連菌(Str.sanguls,Str.intermedius,Str.mitis,Str.milleri)の同定および採血による血液検査,血清分離,保存を行った.これらの患者に対して歯科治療を行い,皮膚病変の変化を評価した.また,保存した血清のうち50例についてマイクロプレート凝集法による菌凝集反応を判定した. (2) 結果 皮膚科患者131名は,男性81名,女性50名であり,平均年齢は48.5歳(18歳から75歳)であった.皮膚科疾患名は,掌蹠膿庖症79例(60.3%),慢性葬麻疹2例(32.1%),結節性紅斑4例(3.1%),多形滲出性紅斑3例(2.3%),尋常性乾癬3例(2.3%)であった. 口腔内慢性疾患名では,辺縁性歯周炎110例(84.0%),根尖性歯周炎66例(50.4%),智歯周囲炎8例(6.1%)を認め,131例中118例に歯科的治療に基ずく臨床的診断を行った.その結果,118例中58例(49.2%)に皮膚症状の改善を認めた. 膿汁採取による細菌検査では,グラム陽性球菌67例(83.8%),グラム陰性球菌55例(68.8%),グラム陽性桿菌18例(22.5%),グラム陰性桿菌4例(0.5%)であった.同定された連鎖球菌は Str.sanguis 15例,Str.intermedius 8例,Str.mitis 3例 であった.保存した血清50例についてマイクロプレート凝集法による菌凝集反応を判定ところ11例(22%)に凝集価の上昇を認めた. (3) 今後の予定 これまでの症例の経過観察,血清凝集反応試験を行うとともに,症例を増やし,歯性病巣感染における血清学的診断法の有用性を評価し,病因の解明を検討する予定である.
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