研究概要 |
本研究はヒトにおけるベリクルを想定したハイドロキシアパタイト(HA)結合性唾液蛋白質とStreptococcus mutansおよびLactobacillus属との付着性の個人レベルでの差が齲蝕感受性判定のインデックスとして利用できる可能性について基礎的見地から検討することを目的とし、次の項目について検討を行った。 (1) 被検者の口腔内診査 保育園児(5才)15名、小学生(10才)30名、専門学校生(平均19才)63名、大学生(平均21才)22名、特別養護施設老人(70才-80才代)65名、および腎移植患者(平均19才)15名の被検者において、DMF指数、唾液中S.mutansおよびLactobacillus属の菌数、唾液分泌量と絹衝能について審査を行い、基礎データベースとした。 (2) HA吸着蛋白質の分離と特性解析 HAbeadsを用い、(1)の被検者からの一定量の全唾液蛋白質を生理的塩強度の下で吸着させ(固定化)、これをSDS-ポリアクリルアミド電気泳動法(銀染色法)により解析した。その結果、全ての試料において60kd付近に2本のmajor bandsが認められた。さらに75,50,45,40,35kd付近にadditionalなバンドが認められるグループと認められないグループとに分けられ、各群での比率は2:1もしくは1.5:1であった。しかしこれらは(1)の検査結果のデータベースから得られる傾向と一致する特徴は認められなかった。また、さらに高分子にadditionalなバンドを持つ例が少数ながら各群に認められ、しかも高齢者ほど検出頻度とバンド強度が増す傾向にあった。
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