本研究はヒトにおけるペリクルを想定したハイドロキシアパタイト(HA)結合性唾液蛋白質とStreptococcus mutans、Lactobacillus属およびCandida属との付着性の個人レベルでの差が齲蝕感受性判定のインデックスとして利用できる可能性について基礎的見地から検討することを目的とし、次の項目について検討を行った。 (1) 被検者の口腔内診査 小学生38名、中学生41名、高校生37名、健康老人(70才-80才代)31名の被検者において、DMF指数、唾液中S.mutans、Lactobacillus属およびCandida属の菌数、唾液緩衝能について診査を行い、基礎データベースとした。 (2) 唾液蛋白質とHA吸着パターンの解析 HAbeadsを用い、(1)の被検者からの一定量の全唾液蛋白質を生理的塩濃度の下で吸着させ(固定化)、これをSDS-ポリアクリルアミド電気泳動法(銀染色法)により解析した。その結果、全ての試料において60kd付近に2本のmajor bandsが認められたが、高年齢になるほどadditionalなバンドが認められる率が高くなった。また、全唾液蛋白質量も高年齢になるほど増加した。現在これらの結果と各菌種検出率との相関性について解析中である。 (3) HA吸着蛋白質の分離と特性解析 60kd付近に検出された2本のmajor bandsを解析するため、HA-カラムを用いたHPLCで分離を試みた。その結果、60kdのリン酸緩衝液溶出フラクションは複数のピークとして検出された。そこでHA吸着蛋白質のウエスタンブロット解析を行ったところ、抗アミラーゼ抗体に反応する60kdバンドが検出されたが、それ以外のほぼ同じ分子量の蛋白質の存在が示唆され、さらに解析を進めている。
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