研究概要 |
本研究者は、化学平衡が熱力学的に安定な構造に経時的に片寄る原理を利用して、ある特定の分子に対する高い親和性を有する分子の構築を自動的に最適化する方法論を考案した。複数の「部品」となる素材分子と標的分子との混合からself assemblyにより、複合体を形成させることを計画し実証することを検討した。 まず初めに、金属-配位子間の配位を化学平衡の種類として取り上げ系を構築することとした。亜鉛イオンを金属の例として選び、4種の異なる配位子を混合し、競争的に配位を行わせた。その結果、析出してきた金属錯体をNMR,FABMASSで分析した結果、限られた種類の配位子を有する錯体を主として与えた。特に主成績体は配位子が2種類のものから構成されており、最も配位力が高いと考えられる配位子のみからなる錯体ではなかったことは興味深い。 第2の方法として、アルデヒド-アミン【double arrow】イミシによる平衡を利用することを検討した。初めに基礎研究として単純なアルデヒドとアミンを用いて本平衡反応をNMRで観測する基礎実験を行った。重水中および重水バッファ一中で確かに平衡として反応が起きていることを確認したが、平衡の偏りはメディアによって差があった。1,3,5-cis,cis,cis-シクロヘキサントリオールを出発物質として環の同じ面側に3つのホルミル基を導入し、標的分子および多種類のアミン類を混在させ、最適化後NaBH_3CN等で還元することにより平衡を停止固定させる。標的として環状AMPを選び、現在トリアルデヒド体を合成中である。
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