研究概要 |
1. 各種リポソームの調製と擬似固定相としての評価(1)各種リポソームの調製:エタノール注入法、超音波処理法、ボルテックス法及びエーテル注入法等の方法を用い、卵黄レチシンとリン酸ジヘキサデシルより小さな1枚膜リポソーム(SUV)、多重層膜リポソーム、(MLV)、及び大きな1枚膜リポソーム(LUV)を調製した。(2)リポソーム擬似固定相のキャラクタリゼーション:ニトロベンゼン及び3種のジニトロベンゼン異性体を試料とし、調製した各種リポソームを分離溶液とするリポソーム動電クロマトグラフィー(LEKC)を試みた。その結果、各リポソームはいずれも擬似固定相として機能することが判明した。また、1枚膜リポソームであるSUVとLUVは類似の分離選択性を示したが、多重層膜構造を有するMLVはそれらとは異なる選択性や分離能を示した。 2. SUVを用いたLEKCによる疎水性化合物の泳動挙動 LEKCの有用性を示す一端として、既にフラーレン化合物(C_<60>とC_<70>)の分離に成功している。この事実は、本法が類似の手法であるミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)では分離し難い、疎水性力高く、かさ高い化合物群をも分離対象としうる可能性があることを示す。そこで、LEKCの分離機構を分子レベルで考察する一環として、分子量(MW)並びに疎水性の指標となるvan derWaals volume(VWV)がほぼ等しく、立体構造が異なる多環芳香族炭化水素を試料とし、分子の立体構造に対する分離選択性を検討することにした。その結果、例えば、平面構造からなる9-フェニルアントラセン(MW254.33,VWV 142.88)と水車状構造を有するトリプチセン(NW254.33,VWV 143.25)は異なる泳動パターンを示し、LEKCが分子の疎水性のみならず、分子の形状を認識して分離を達成している可能性が示唆された。
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