末梢血管より注入されたミクログリア細胞が、脳特異的に組織移行する特性に着目し、培養ミクログリア細胞株に目的遺伝子を導入し、脳特異的に遺伝子を送達し発現させることにより脳障害治療効果が期待されるタンパク性因子を脳特異的かつ非侵襲的にデリバリーする技術は、脳障害治療など臨床への応用が期待されるだけではなく、脳機能解明のための基礎的研究においても強力な実験手法となり得る。この手法を開発するために、まず、培養ミクログリア細胞株へ外来的に遺伝子を効率よく高発現させる方法を検討した。Green fluorescent protein(GFP)、あるいは、サイト力インとGFPとの融合タンパク質をコードするcDNAを組み込んだを真核細胞発現用プラスミドを、カチオニックリポソーム法あるいはエレクトロポレーション法により導入した場合、0.003〜0.1%の効率で、高い発現を示す細胞が得られた。この発現は1ヶ月以上経過しても維持されていたことから、この細胞を脳内へ移行させた後にも、遺伝子がコードするタンパク質の持続的な効果を期待することができる。しかし、脳内へ細胞を移入させるに際し、目的遺伝子を発現するミクログリア細胞を量的に確保することが必要である。この問題は解消するには、導入遺伝子を発現するミクログリア細胞の単離・クローン化が必要であり、現在、fluorescein avtivated cell sortor(FACS)を用いた方法の確立を検討している。
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