研究概要 |
食品紅花中にはセロトニン誘導体(N-(p-coumaroyl)serotonin(CS),N-ferutoyserotonin)の他、ポリフェノール類,に含まれる抗酸化物質が存在する。これらのセロトニン誘導体がグラム陰性菌のエンドトキシンリポ多糖(LPS)刺激によるヒト末梢単球からの炎症性サイトカインの産生を抑制する以外に、細胞増殖促進活性ももっていることを見出したのでその機序を明らかにする。そして、病気の予防、創傷治癒、また、抗炎症剤としての創薬の基礎的研究を目的とする。本年度は以下の点が明らかになった。 1) 単球/マクロファージをLPSで活性化させると培養上清中の炎症性サイトカインであるIL-1α,IL-1β,IL-6,INFαの活性が上昇するが、CSを加えていくと50μMで約50%抑制され、200μMで完全に阻害された。この効果は、ELISAで定量したタンパク量レベル、ノーザンハイブリダイゼイションで調べたmRNAレベルでも同様だった。 2) CS類似化合物として、N-(p-coumaroyl)tryptamine(CT),N-(trans-cinnamoyl)tryptamine(CinT)とN-(trans-cinnamoyl)serotonin(CinS)を合成し、抗酸化活性の構造活性相関-を調べたところ、serotoninに付いている水酸基が抗酸化活性に関与していることが明らかになった。 3) LPS刺激ヒト末梢半球からのIL-1α,IL-1β,IL-6,TNFαの産生抑制作用は、CS>CT>CinSの順で強められたが、CinTには作用が認められなかった。 4) タンパク合成阻害作用は、CS,CTの方がCinS,CinTよりも強く認められた。 5) CSの構成分子のトランス-4-クマル酸とセロトニンは、各々単独では細胞増殖促進活性は認められなかった。 6) 正常なヒトやマウスの線維芽細胞増殖活性は、CS,CinS,CT>CinTの順であった。 7) CSは、酸性の線維芽細胞成長因子(aFGF)や血小板由来の成長因子(PDGF)ではなく、塩基性の線維芽細胞成長因子(bFGF)や上皮成長因子(EGF)と共同して線維芽細胞を増殖させることが明らかになった。
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