研究概要 |
【目的】本研究は、医療の質を高める医学的動機づけと医療費の適正化を促す経済的動機づけを統合した、新しい診療報酬体系の確立に向けた方法論を検討することを目的とする。 【対象と方法】1)入院時医学管理料の在院期間による逓減制は全疾病一律で、疾病ごとの在院日数の分布の違いが反映されず、医療の質の向上に有効な手段となっていない可能性がある。そこで、平成5年及び平成8年患者調査を用いて、在院期間による逓減制を疾病別に設定した場合に、適切と考えられる在院期間の区分および点数を算出した。2)患者調査の推計退院患者数には病床区分がないが、これを一般病床と老人病床に区別する推計を行い、疾病ごとの在院日数累積度数分布から、それぞれの疾病が一般病床と老人病床のどちらの性格に近いかを分類した。3)平成7年社会医療診療行為別調査から疾病別に在院期間ごとに得られる定型的な点数を確定し、病床利用率を考慮しながら最も高い点数が得られる在院日数を算出した。 【結果と考察】1)全疾病における逓減制の在院期間別割合を用いると、例えば胃がんでは、全疾病の2週、1月、2月、3月、6月の区分のかわりに、15日、24日、35日、42日、55日の区分が適切と考えられる。一方、全疾病の期間区分を用いた場合には、例えば胃がんでは、それぞれの点数を522→538,430→266,305→176などに設定するのが適切と考えられる。2)一般病床の累積度数分布から±10%以上乖離している疾患は感染症、循環系、胃炎・十二指腸炎 妊娠・分娩など少なくない。一般病床の高血圧、脳血管疾患は老人病床の性格に近いことが判明した。3)在院日数の短縮による患者数の減少を双曲線で算出すると、例えばがんでは、利用率が95%では13日、90%では25日、85%では30日で病床を回転することで最も高い点数を得ることができる。
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