研究概要 |
本年度の研究成果は, (1) pH-sensitive liposomesと核局在化シグナルの付与により,高分子を細胞外からエンドサイトーシスの経路を介して核内へ選択的に送達することに成功した(Biochem.Biophys.Res.Comm.251:538-544,1998).この方法は,高分子の細胞内動態制御の基本的戦略として有用である. さらに,核への選択的なDNAの送達に着手した.しかしながら,核内へ送達されたDNA量を評価する系が確立されていないため,その方法の開発から着手した. (2) 我々はPCRを応用することにより,核一個あたりに導入されたプラスミドの数を定量可能な方法を確立することに成功した(橘ら,第13回日本薬物動態学会,11月).本法の確立により,遺伝子の核内送達量と発現量との関係を明らかとすることが可能となった.その結果,プラスミドの投与量を増加させると,発現量と核移行量ともに著しい飽和性を示した.さらに,核移行量が5000個を越えると発現量に飽和が見られ始めることが明らかとなった.本定量法は,細胞内動態の最適化を行うための有用な手段となり得る.今後は,本定量法を細胞質中のプラスミドの定量法へと拡張していく予定である. (3) 一方,TFIIHに対するリガンドを設計し,CTD-配列に対応したペプチドを3回繰り返した構造をもつ阻害リガンドを合成した.その転写阻害活性をin vitro再構築系において検討したところ,阻害効果を確認することに成功した.
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