研究概要 |
エルピアF-XIII(ダイヤトロン)は凝固第XIII因子a subunitモノクロナール抗体を用いた第XIII因子測定キットである。これを使用し各種造血器疾患の血中第XIII因子量を測定した。その結果,急性骨髄性白血病,骨髄異形成症候群,慢性骨髄性白血病,慢性好中球性白血病,骨髄線維症,再生不良性貧血,赤芽球癆で血中第XIII因子量の有意な低下が認められ,かつ因子量の低下は末梢血白血球数ならびに血小板数と有意な正の相関を示していた。この成績は第XIII因子量が造血環境に密接に関連していることを示唆する成績と考えられる。 そこで骨髄におけるCD34陽性細胞の量的変化と血中第XIII因子量との関係を検討したが,有意な相関は得られなかった。一方,急性骨髄性白血病の骨髄移植症例3例を対象に,その前後における血中第XIII因子量の検討では因子量の改善傾向が認められた。この結果は病的な造血環境においては第XIII因子分泌細胞の量的減少のみならず,a subunit産生細胞の質的異常が第XIII因子量低下に関与している可能性を示唆するものと考えられる。 なお,移植症例に関しては今後a subunitのphenotypeについても検討を加える予定である。 第XIII因子a subunit産生細胞の同定については,プロテインAが入手困難であったことからRHPAM法による検討は断念せざるを得なかった。そこでフローサイトメーターによる同定法について現在基礎検討を開始したところである。またXIIIa(a subuint)DNAの増幅用プライマーの作成については,現在基礎実験が順調に進行している。適切なプライマーが作成できれば造血幹細胞コロニーを用いてXIIIa geneの増幅とm-RNAの発現について検討し,a subunit産生細胞の質的異常について遺伝子レベルで明確にしたいと考えている。
|