研究概要 |
【目的】 (1)ホルムアルデヒド(HCHO)消毒を実施したクリーンルームと実施しなかったクリーンルームのHCHO濃度を比較し,HCHOを使用した場合の危険性について考える。 (2)病棟スタッフが簡便に実施できる,検知管を使用(吸引法)したHCHO残留濃度測定の有用性を検討する。 【方法】 名古屋大学医学部附属病院小児科病棟が,旧病棟(HCH0消毒)から新病棟(消毒薬で拭く)に移転(1999年6月)する前後の骨髄移植時に,クリーンルームのHCHO濃度を経日的に測定した。測定は1998年8月から2000年2月に,患児の保護者に調査の目的と方法を伝え,承諾が得られた6例(旧病棟で5例と新病棟で1例)の患児の入室期間中におこなった。測定には,柴田科学機械工業製のパッシブガスチューブヘの24時間吸着法と,光明理化学工業製のガラス検知管を用いた吸引法を併用した。吸着法はAHMT法で定量し,吸引法は測定直後に目視で値をみた。 【結果】 新病棟(HCHO消毒未実施)のクリーンルームは,築後10か月で室温も29℃前後と高いため,高濃度が予測された。実際は,吸着法で4〜10ppbで,一般住宅に比較してもかなり低い濃度であった。HCHO消毒を実施(旧病棟)した場合は,患児の入室直前で1000ppbを超え,1か月後でも180ppb程度で厚生省の勧告値80ppbと比較して高濃度であった。簡便な吸引法は,吸着法の1〜2.5倍高くなる傾向が強く,HCHO消毒未実施で低濃度下の測定では,1.7〜3.6倍とさらに高くなっていた。 【考察】 HCHO消毒をおこなった場合,室内にはアイソレーターのヘパフィルターやカーテン・マットなどHCHOが吸着する物品が多く,長期に渡って吸着物品からの放出が続くため,高濃度環境が持続したことが考えられた。HCHO消毒をしない場合でも,HCHOで消毒した吸着しやすい物品を多く持ち込むことで室内の濃度が高くなる可能性がある。簡便である吸引法は,ある程度高く測定してしまうことを考慮した上で使用する必要がある。
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