研究概要 |
第1年次は,筋ジストロフィー在宅療養者における呼吸障害への対応を取り上げ,事例研究を通じて以下の点を明らかにした: 1. 呼吸障害の進行期(人工呼吸療法の導入まで) この時期の療養者と家族介護者の課題として,(1)人工呼吸療法の実施に関する意思決定を行う;その基盤として,必要な知識や情報を得る,(2)自己の身体状況を観察し,障害や症状の進行を早期に把握する,(3)自己の療養環境(物理的環境,社会資源の活用,介助のマンパワー確保など)を整備する,などが挙げられた。 症状マネジメントの焦点としては,(1)呼吸不全にともなう症状か否かを判別する,(2)療養者が変化や不調に気付いた際に,医療従事者に確実に報告・相談する,(3)症状経過を適切な方法で記録し,判断の資料とする,などが挙げられた。 2. 急性のエピソード発生時 感冒罹患時等に,(1)「様子を見て」いるうちに重症化する例があるので,医療サービス利用のための判断基準を明確に提示する必要がある,(2)療養者が自己の状態を判断し,適切な対処がとれるように,きめ細かく相談や助言を行えるシステムが必要である,(3)こうした機会を利用して,緊急時の対応について検討しておく,などの点が挙げられた。 3. 人工呼吸療法導入後 症状マネジメントの焦点として,(1)導入時点で1日数時間のみ換気補助を必要とするケースの場合,その後の経過中に換気補助時間の延長が必要となるが,その際に適切な判断と自己管理を行う,(2)外出・外泊等を計画する際,その適否の判断や安全管理を的確に行う,(3)栄養管理,排泄管理など,全身の自己管理を行う,などが挙げられる。
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