研究課題/領域番号 |
10878004
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
征矢 英昭 筑波大学, 体育科学系, 助教授 (50221346)
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研究分担者 |
藤川 隆彦 三重大学, 医学部, 助手 (60293776)
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キーワード | LT強度 / 走運動 / 海馬 / c-fos遺伝子 / 脳由来神経栄養因子(BDNF) / in situ ハイブリダイゼーション / 中枢栄養知呆 / ラット |
研究概要 |
BDNF(脳由来神経成長因子)は海馬体などに多く発現し、神経の生存や再生過程に重要な役割をもつことが示唆されている。アルツハイマー病などでは他の神経栄養因子や神経成長因子などと比較して特異的に減少することも報告されている。運動は果たしてBDNFの合成能にどのような影響を及ぼすのであろうか。本研究では一過性の運動による海馬の興奮部位をc-fos遺伝子発現から確かめ、さらにそこにBDNF遺伝子発現が増加するか否かについて短期の運動学習後の時間経緯の中で検討した。実験は雄ラットにLT速度(およそ20m/min)の走運動で10日間学習させ、最後の運動直後ならびに48時間後に脳を摘出し、凍結切片を作成し、直後の脳を海馬c-fosの遺伝子発現、48時間の脳をBDNFの遺伝子発現の解析に供した。c-fosmRNAは^<35>Sで標識したantisense probeによるin situ hybridization(ISH)紐織化学法から半定量した。これはBDNFの遺伝子発現についても同様なBDNF cRNA antisense probeを用いて行った。遺伝子発現の有無と程度についてはX線フィルムを用いたラジオ・オートグラフィーを行い、得られた画像データを画像処理システムにより判定量した。対象群としては何ら運動させない群(N群)とした。その結果、海馬のCA1〜CA3ならびに歯状回において、運動直後にC-fos mRNAの強い発現がみられた。さらにBDNFmRNAについていもわずかながら有意な増加傾向がみられた。一過性の適度な運動が海馬のBDNFの合成能を高める可能性を示唆するとともに、そのメカニズムを探る上での極めて有用なモデルが得られることが示唆された。今後、運動強度や時間経緯などをかえながら、現象をより明確にし、確固たるモデル作成を目指して行きたい。
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