被検者には大学野球1部リーグに所属する投手5名を用いた。被検者に対してはあらかじめ実験の趣旨および危険性を十分に説明し、同意を得た。 被検者の筋力を等速性筋力測定装置(メラック:SONY製)を用いて測定した。測定は十分なウォーミングアップを行わせた後、角速度毎秒30度、90度、180度および300度で、膝屈曲、膝伸展、肩屈曲、肩回旋および肘屈曲の筋力を測定した。この値を各投手の投球前の筋力とした。その後1週間以上の間隔をあけ、1イニング15球の投球を6分間の休息を挟んで合計9イニング行わせたあと、同じ筋力測定を行った。 投手によって球速の変化、筋力の低下部位など一様な傾向を示さず、投手によって疲労のパターンが違うことが明らかになった。等速性筋力においては角速度の違いによる投球前後の筋力変化の違いは見られなかった。 投手Aは、球速は有意な低下を示さなかったが、等速性筋力においては膝屈曲、膝伸展、肩屈曲の各項目において投球後有意に低下していた。 投手Bについては、1イニング目と9イニング目を比較すると平均で7 km/h 有意に低下していた。等速性筋力では膝屈曲、膝伸展力が有意に低下した。 投手Cでは、球速は有意に低下しなかったが、膝屈曲力が有意に低下した。 投手Dでは、平均球速が5km/h有意に低下し、筋力では、肘屈曲力が35%低下した。 投手Eでは、球速は有意な変化を示さなかったが、膝伸展力が有意に低下した。
|