本年度は、投球前後の関節筋力の変化を調べ、投球後にどのように筋力が低下するかを明らかにした。 被検者には、大学野球一部リーグに所属する投手5名を用いた。 被検者には充分なウォーミングアップの後、等速性筋出力測定装置を用いて、肩内旋力、肩伸展力、肘伸展力、膝屈曲力、膝伸展力を角速度180°/secで測定した。 筋力測定後少なくとも1週間以上の期間をおいた後、6イニングからなる90球の投球テストを行い、その後同じ筋力測定を行った。すべての投球について捕手後方の肩口より、スピードガン(DECATUR ELECTRONICS製)を用いて初速を計測した。90球投球テスト終了直後に前記の等速性筋力測定を行った。 また90球投球テスト後、少なくとも1週間以上の期間をおいた後、同じプロトコールで9イニングからなる135球の投球テストを行った。135球の投球テスト直後にも前記と同じ等速性筋力測定を行った。 被検者5名の投球前、90球投球テスト後、135球投球テスト後の等速性筋出力の平均値の変化は、投球前の各筋力の平均値を100%とした時、肩伸展力は90球投球後で91.7%(N.S)、135球投球後で77.8%(p<0.05)、肩内旋力はそれぞれ87.9%(N.S)、75.8%(p<0.05)、肘伸展力は85.0%(N.S)、72.7%(p<0.05)、膝屈曲力は93.4%(p<0.05)、88.6%(p<0.05)、膝伸展力は91.4%(N.S)、85.9%(p<0.05)であった。 その結果、90球投球後では膝屈曲力にのみ有意な低下が見られたが、135球投球後では肩伸展力、肩内旋力、膝屈曲力、膝伸展力に有意な低下が見られた。これらのことから投手が疲労することなく一日に投球できるのは90球前後ではないかと考えられる。
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