京都大学物理学教室では一連の実験教育の改革のなかで、学部学生との懇談会や学生に対するアンケート調査などを行ない、大学および研究所を通じ全国的に取り組む意義のあるものとして、「Summer Studentの試み」 と「共同利用研を利用した学部学生教育の試み」を認識するに至った。「Summer Student制度」は欧米でよく行なわれているもので、学生が夏休みに研究現場において働き、最先端の研究の息吹きに触れることを目標としている。日本ではこうした制度は存在しないが、各大学などで単位なしの「夏休み実験」という形で試行されているようである。京都大学物理学教室では今年度、試行開始から3年目の試みとして ●光子の裁判:という題でSingle Photonの干渉を観測する実験(担当教官:笹尾登) ●素粒子を目で見よう:という題でスパークチェンバーの製作と動作(担当教官:延與秀人) ●コンピューターを作ろう:という題で計算機を基本的な半導体素子から構築する試み(担当教官:坂本宏) ●放射線を目でみよう:という題でタンデム加速器を利用して放射線計測を行なう実験(担当教官:村上哲也) 以上を2、3回生を対象に行なった。試行も3年目ともなると教官側も大分勝手が分かってきて、各課題とも充実した内容と結果を出すようになっている。今後はこの試みの「教育的効果」を定量化することを考えていきたい。また学生の手になるレポートがhttp://tancho.scphys.kyoto-u.ac.jp/Kaizen/index.htmlにあり、学生諸君の楽しんで学んだ様子が良く分かるので是非参照していただきたい。 また、笹尾は4回生の卒業研究を熊取の京大原子炉の中性子ビームを用いて進めた。この試みはこれまで、94年度に高エネルギー研究所(KEK)で行なったπ粒子ビームを用いた実験、95年度に日本原子力研究所で行なった熱中性子を用いた実験に引き続き、共同利用研でおこなう学部学生の実験教育という観点から重要なステップであると認識している。次年度は、これらの試みの更なる充実を試みるとともに、それに参加した学生の進路の選び方などの追跡調査を行なう予定である。
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