「Summer studennt制度」は欧米でよく行なわれているもので、学生が夏休みに研究現場において働き、最先端の研究の息吹きに触れることを目標としている。例えばメッカであるセルン研究所(在ジュネーヴ)では大学3年次以上の学生に対し公募し100人以上の学生を集めている。学生には滞在費と交通費を支給し8週間以上の滞在をさせ、ノーベル賞受賞者までも含むレクチャーや、実際の研究活動のお手伝いなどを体験させている。日本ではこうした制度は公には存在しないが、各大学などで単位なしの「夏休み実験」という形で試行されているのが現状である。セルンのものには及びもつかないが、京都大学物理学教室でも試みを開始しており、今年度は4年目にあたる。実際のプログラムとしては、 ・ Fizeau Experiment and Aharanov-Bohm Effect (担当教官:笹尾登) ・ コンピューターを作ろう (担当教官:坂本宏) ・ 素粒子を目でみよう (担当教官:延與秀人) 以上を2、3回生を対象に行なった。4年目ともなると教室の定例のカリキュラムのごとくに学生間に浸透してきた。教官側も大分勝手が分かってきて、各課題とも充実した内容と結果を出すようになっている。今後はこの試みの「教育的効果」を定量化することを考えていきたい。またこれまでの学生の手になるレポートがhttp://www.scphys.kyoto-u.ac.jp/BIRDnet/Kaizen/index.htmlに公表されており内容も年々充実してきている。教官側にも欲が出てきて内容も年々高度になっているが実際問題として京大理学部学生にしか門戸を開くことが出来ないのが現状である。 また、延與は4回生の卒業研究を筑波の高エネルギー加速器研究機構・メソン科学研究施設において実施した。ここではパルス化されたミューオンにより μ SRのシグナルを観測するとともに生成されるミューオニウムの真空中への取り出しを試みた。この試みを開始した5年前に比べ、共同利用研の学生実験に対する理解も格段に高まってきていることが認識された。 次年度は最終年度でもあり、これらの試みの更なる充実を試みるとともに、それに参加した学生の進路の選び方などの追跡調査を行なうとともに諸外国での実体も詳しく調べていく予定である。
|