我々大学研究者は教育活動を「研究」とは認識していないことが多いが、「大学における教育法」を研究し、それを「公開」していくことの重要性を考える立場から本申請を行った。「大学における実験教育」は多くの大学関係者が多大な時間をかけているにもかかわらず、これに対応するような研究は分野として確立していない。ここで取り上げた「Summer student制度」は欧米でよく行なわれているもので、学生が夏休みに研究現場において働き、最先端の研究の息吹きに触れることを目標としている。日本ではこうした制度は存在しないが、各大学などで単位なしの「夏休み実験」という形で試行されているようである。京都大学物理学教室でも学内で過去6年間にわたり試行を行なってきた。 実際のプログラムとしては、1)光子の裁判(観測問題)、2)コンピューターを作ろう、3)素粒子を目でみよう、というような内容で、主に2、3回生を対象に実施した。6年目ともなると教室の定例カリキュラムの如くに学生間にも浸透した。これまでの経過は学生の手になるレポートとしてhttp://www.scphys.kyoto-u.ac.jp/BIRDnet/Kaizen/index.htmlに公表されており内容も年々充実してきている。教官側にも欲が出てきて内容も年々高度になっているが実際問題として京大理学部学生にしか門戸を開くことが出来ないのが現状であった。 並行して「共同利用研を利用した学部学生実験教育」の試行も行った。94年度に高エネルギー研究所でπ粒子ビームを用いた実験、95年度に日本原子力研究所で、熱中性子を用いた実験を行ない、99、2000年度には高エネルギー加速器研究機構・メソン科学研究施設ならびに12GeV陽子加速器をにおいて実施した。この試みを開始した5年前に比べ、共同利用研の学生実験に対する理解も格段に高まってきていることが認識された。 今年度は最終年度であるので、これまでプログラムに参加した学生の進路追跡調査を行うとともに、米国、欧州などの研究所でのサマースチューデント制度の実態も調査した。調査結果とあわせ本プログラムの報告書として出版する予定である。
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