研究概要 |
平成10年度における本研究の実施結果は,次の通りであった。 1. 理科の授業におけるコラボレーションを分析することのできる基礎理論について検討するために,認知心理学において社会文化的アプローチと呼ばれている領域の諸研究を収集し,データベース化するとともに,この立場の主要な概念について検討した。収集されたのは,主にヴイゴツキー,バフチン,ワーチ,ロトマンなどに関係する文献である。 2. 1.の理論的な検討からロトマンの提案しているテクストの機能的二重性およびワーチの特権化の概念を取り上げて,小学校の理科授業におけるコラボレーションの分析を試みた。対象とした授業は,小学校6年生1クラスの「水溶液の性質」(全20時間)であり,4台のVTRを利用した参加観察によってデータを収集した。期間は,1998年10月上旬から11月上旬の約1ヶ月間であった。分析にあたっては,VTR記録からすべての音声記録をトランスクリプトとして書き起こすとともに,コラボレーションのあり方が特徴的な場面については,映像記録から非言語的行為の一つである身体配置をスケッチとして抽出した。結果としては,ロトマンとワーチの概念を適用することで,教師と子どもたちによる相互行為の中で編成されていくコラボレーションの過程について詳細に記述することができた。また,ダイアローグとしての相互行為が編成されるときのコラボレーションのあり方についての知見を得ることもできた。
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