本研究は、開発途上国の科学教育の現状と課題を相互にあるいは先進諸国の開発過程と比較しながら包括的に考察し、当該分野の国際協力に新たな展望を開くことを目指している。昨年度は第一段階として、先行研究の整理分析を行い、開発途上国における科学教育(理数科教育)の現状と課題の類型化を行った。 今年度(最終年度)は、さらに科学教育の問題点や課題を比較考察し、国際協力の面からその構造と特質を明らかにした。日本の科学教育の経験が国際協力を通じ途上国に移転されることが少なくないが、時としてその経験が途上国の現状と乖離しているため、さまざまな弊害をもたらしている可能性が判明した。事例研究として、フィリピン、インドネシア、ガーナ、ケニア、南アフリカで行われている日本の協力プロジェクトを比較し、各プロジェクトが有する特質を各国の教育環境のなかで対比しながら明らかにした。 本研究成果は、まだ十分なものとは言えないが、国際協力の実務者や協力活動に従事する専門家に一つの計画作りや活動の指針になり得るものと考えられる。
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