研究概要 |
まず,討論行動の基礎として,認知心理学,社会心理学等の関連研究の整理検討を行った.実験的状況を用いて,推論のバイアスを検討した研究は多く見られるものの,現実的な討論場面を記録して分析した研究はほとんどないことが明らかになった.そこで,本研究では,実際の討論場面を素材にして,討論の評価の視点を研究する方法論を明らかにするということに焦点をあてた.第1にとりあげたのは,被験者が討論を行った場面をビデオにとり,再生刺激法により,自己評価・相互評価する方法であった.第2に,電子メールで討論を行い,その記録をあとから見直して自己評価・相互評価する方法であった,第3には,すでに書物等に掲載されている討論記録を材料にして,被験者にどの発言が良かったか,討論は生産的だったといえるか等を評価させる方法であった.こうした方法を試行錯誤的に行ってみて,方法論的に見た長所・短所,評価者の学問的訓練との関係,教育的に見た効果を検討した.とくに,電子メールによる討論のあり方を考察するのが,当初の研究目的の一つであったが,参加者の発言しやすさに極めて大きな個人差が生じ,その心理的要因が考察された.また,電子メールを含め,討論記録を後から検討することや他者が検討することは,討論進行時に直接関わっている者(時)よりも,多くの矛盾や問題点を発見できることが示唆された.これは,討論の改善を考える際にも,重要な点であると思われた.
|