研究概要 |
本研究の目的は、認知技能の学習において、先天的に障害されていた感覚や運動を人工現実感技術によって新たに構成させる状態を「オルタナティブ・リアリティ(障害児者の代替現実感:Alternative Reality)」と名付け、この成立の機序とその促進要因の解明を試みるものである。本年度は、これまでに開発してきた人工現実感技術を利用した学習環境の構築を行うための基礎的な検討を行った。具体的には、まず、3次元聴覚ディスプレイを中心にした検討を行い、次いで、簡易CAVE型ディスプレイを用いた検討を行った。 第一に、3次元聴覚ディスプレイについては、視覚障害分野における応用について、音源定位能力の向上の学習プログラムを中心に検討した。この内容は「頭部伝達関数を用いた聴覚情報提示システムの障害児教育への適用,電子情報通信学会信学技報EA98-44(1998-08)」(棟方ほか,1998)に報告した。来年度は、空間認知などの向上について検討を進める計画である。 第二に、簡易CAVE型ディスプレイについては、システム構成や、オルタナティブ・リアリティの成立について検討し、「障害児者における人工現実感「オルタナティブ・リアリティ」の教育応用(日本教育工学会研究報告集,JET98-4,pp.109-114.)(棟方ほか,1998)」に報告した。次年度は、これらの成立と促進要因を実証し、障害ゆえの認知的障害を最小限にする新しい指導方法についてさらに研究を進める計画である。
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