本研究は、教師の教授活動を支える教師の信念(Teacher's Belief)を比較文化的視点から対象化・相対化してとらえることを目的としている。本研究では教師の信念を「理想信念」と「実践信念」とに区別し、その国の文化的背景が特に「理想信念」に反映されると考える。 本研究で得られた成果は以下のとおりである。 1.教師の信念を「理想信念」と「実践信念」を視点としてとらえる理論的枠組みを用具的理解と関係的理解を視点として構築した。 2.上記の視点に基づいて実施したインタビュー調査の結果、以下の諸点が判明した。 (1)授業開始前では関係的理解を指導目標とするが、実際に授業が始まると用具的理解に留まる傾向が見られた。しかも、教師自身、目標と実態とのズレを意識している実態が明らかになった。 (2)実際の授業で用具的理解として特定される発問や指導をしてしまう背景には、関係的理解を深める具体的な発問の内容と形式が事前に十分に明らかにされていないことが判明した。 3.教師の信念の変容をとらえるための質問紙調査課題を開発した。これを日米の教育実習生に実施することで、今後「理想信念」と「実践信念」の様相がより一層明らかにされよう。
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