研究概要 |
学校と美術館が有機的に連携して鑑賞教育の成果を挙げる方策を明らかにするため,前年度に実施した全国美術館の教育普及担当者向け調査等を踏まえ,平成11年度は,次のように研究を展開し、知見を得た。 1.学校教育の鑑賞教育に対する実態把握 (1)「学校と美術館との連携に関する調査:学校における図面工作・美術科教科担当者向け質問紙」の実施学校における図面工作・美術科の位置や美術教育における鑑賞の扱い,学校と美術館との連携に関して質問紙法による調査を実施した。調査対象は,各都道府県の都市部および都部から抽出した小学校94校及び中学校95校。小学校30校(回収率31.9%),中学校44校(同46.3%)から回答を得た。1999年9月に実施。 (2)図面工作・美術科教科担当者への面接訪問調査 前掲調査と平行して,学校訪問による授業観察と面接調査を実施。鑑賞教育の実践事例収集と実態把握。 2.美術館担当者向け調査の結果との照合・検討 前年の「学校と美術館との連携に関する調査:美術館教育普及担当者向け質問紙」(回収率64.3%)の集計結果と照合し,類似問題に関する両者の意識や状況などについて検証した。そこから導かれた主要な課題は,(1)移動のための時間設定と費用捻出も問題,(2)教育と学芸員の相互交流の必要性とその機械の不足,(3)両者の意識改革:表現制作中心の学校と敷き居の高い美術館,(4)鑑賞の評価に関する見解の相違,である。 3.地域の美術館利用を組み込んだ鑑賞授業モデルの立案と試行 子どもが本物に触れる可能性を求めて,学校と美術館の相互連携から鑑賞授業モデルを試行した。調査から,すべての学校が美術観に子どもを引率するには無理があるが,教室で地域の美術館収蔵作品を取り上げることは,子どもが美術館で本物に触れる動機付けにすると着目した。いくつかの方法論の事例(宮崎県立美術館や練馬区立美術館作品の教材化など)を試みているが,小学生にも好結果が得られている。今後さらに題材開発と検証を進め,授業モデルとして一般化を図りたい。
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